素材と焼きに、ひとつひとつ理由があります。
川魚問屋として長年うなぎを扱ってきた経験と、二十余年、焼き場で培ってきた技。
素材選びから管理、焼き、炭、たれまで。ひゃくわ亭のおいしさを支える、ひとつひとつのこだわりをご紹介します。
三河一色産を、問屋の目で。
ひゃくわ亭で使用しているのは、一色うなぎ漁業協同組合から直接仕入れる三河一色産の活鰻です。
母体である川魚問屋・岐阜今清として仕入れ、その中から、ひゃくわ亭で使う鰻を選んでいます。長年うなぎを扱ってきた問屋として、産地とのつながりを大切にしながら、現在は三河一色産にこだわってお届けしています。
鰻には、季節ごとの楽しみもあります。
初夏から夏にかけて入荷する「新仔」は、皮が薄く、やわらかな身と上品な脂が魅力です。
秋には、三河一色のブランドめすうなぎ「艶鰻(えんまん)」も登場します。「艶鰻」は、特許技術を活用して育てられた希少なめすうなぎ。やわらかな皮と厚みのある身、上品にのった脂と、雑味の少ない豊かな旨みが特徴です。
新仔から艶鰻へ。入荷の時期や鰻の状態は、その年の生育状況などによって、毎年同じではありません。
季節とともに変わる、三河一色の鰻の味わい。その時季ならではのおいしさを、ひゃくわ亭でお楽しみください。
活かして、整えて、見極める。
うなぎは、仕入れてすぐに焼き場へ向かうわけではありません。
岐阜今清に届いた活鰻は、まず産地やサイズごとに分け、「立て場」と呼ばれる場所で活かしておきます。うなぎは、割く直前まで元気な状態で活かしておくことが大切。死んでしまうと身に臭みが出て、味にも影響するためです。
岐阜今清の立て場では、汲み上げた地下水を桶の上から絶えず流しながら活鰻を管理しています。岐阜市南部の茜部は、長良川の伏流水に恵まれた地域。その地下水にさらすことで、うなぎの臭みや雑味を取り除いていきます。
立て場では、ただ活かしておくだけではありません。病気や弱りがないか、皮の硬さや色などを見ながら状態を確認し、卸先の用途や、ひゃくわ亭で使ううなぎを選別していきます。
そして、長く立てればよいというものでもありません。時間が経てばうなぎは弱り、脂が落ちて痩せていきます。活かしながら整え、良い状態を見極めて送り出す。
焼き場に届く前から、ひゃくわ亭のうなぎづくりは始まっています。
香りと音で見極める、焼き手の技
ひゃくわ亭の焼きは、備長炭の強い火力で一気に焼き上げるのが基本です。
けれど、鰻はいつも同じではありません。大きさや季節によって脂ののり方も違うため、決まった時間で焼けば同じ味になるわけではありません。
焼き手が頼りにするのは、香りと音、そして焼き色。
まずは白焼きで、全体がきれいなきつね色になるまで火を入れます。一度タレをくぐらせて焼き台へ戻し、焦げる手前を見極めながら香ばしい焼き目をつけていきます。焼き目が均等についたところで、仕上げにもう一度タレをくぐらせて完成です。
串は、身崩れを防ぎながら均等に火が入るよう、身と皮の間ぎりぎりを狙って打ちます。炭の位置も動かしながら火力を調整し、焼きムラなく仕上げていきます。
新仔は、皮にも身にも脂がのっているため、強火で短時間に。秋からの艶鰻は、その特徴に合わせて少し時間をかけて。その時々の鰻を見ながら、焼き方を変えるのも職人の技です。
そして、ひゃくわ亭が大切にしているのは、一本だけを上手に焼くことではありません。
「100本なら100本、同じように焼く。」
何本もの鰻を同時に焼きながら、一尾一尾の香り、音、色を見て、同じ焼き上がりへと揃えていく。その感覚は、長年、焼き台の前に立ち続けてきたからこそ身についたものです。
そして今、その焼き方を間近で見て覚えてきた次の世代へ。言葉だけでは伝えきれない「勘」まで、少しずつ受け継がれています。
強い火を絶やさない、備長炭
ひゃくわ亭で使っているのは、ラオス産の「金華備長炭」。中でも、ほどよい大きさに割られた荒割中を使用しています。
火付きがよく、強い火力を保ちやすいこと。火起こしの際にも爆ぜにくく、扱いやすいこと。毎日たくさんの鰻を焼くひゃくわ亭にとって、使い勝手のよい炭です。
焼き台には備長炭を惜しまずたっぷりと。高い火力を保つため、焼いている間も炭の状態を見ながら継ぎ足し、火を絶やさないようにしています。
そして備長炭の魅力は、火力だけではありません。炭そのものの香りがよく、鰻を焼いたときの香ばしさにもつながります。
たっぷりの備長炭と、絶やさない強い火。それも、ひゃくわ亭の焼きを支える大切なもののひとつです。
あとを引く旨み、ひゃくわ亭のたれ
ひゃくわ亭のたれには、長良川近くに蔵を構え、昔ながらの木桶仕込みを守り続ける山川醸造さんの醤油を使用しています。
二種類の醤油を使い、そのうち一つは、ひゃくわ亭のたれに合わせて調合していただいたもの。濃口醤油と、旨みとコクのあるたまり醤油、それぞれの持ち味を生かして仕立てています。
白焼きした鰻をたれにくぐらせ、炭火で香ばしく焼き上げ、仕上げにもう一度たれへ。ほどよい甘みとまろやかさがあり、鰻そのものの旨みを引き立てる味わいです。
うな重・うな丼のご飯には、岐阜県産ハツシモを使用。JAぎふの蔵出し米を年間契約で仕入れ、ガス釜で炊き上げています。粒立ちのよいご飯にたれがよくなじみ、鰻とともに頬張ったときのおいしさまで大切にしています。
鰻の旨み、炭火の香ばしさ、そしてたれの旨み。食べ終えたあとにも、また食べたくなる。そんなあとを引くおいしさが、ひゃくわ亭の蒲焼です。
川魚問屋として、岐阜の清流の恵みを。
岐阜今清が長年扱ってきた川魚のひとつが、岐阜県産の天然鮎です。
鮎の季節を迎える頃、岐阜市場では天然鮎の競りが始まります。二代目から三代目へと引き継ぎ、仲買人として競り場に立ってきました。市場内での仲卸営業を終えた現在も、買参人として競りに参加し、岐阜の清流で育った天然鮎を仕入れています。
岐阜を代表する清流・長良川では、鮎と清流、漁業、地域の暮らしや文化が深く結びついた「長良川システム」が、2015年に「清流長良川の鮎」として世界農業遺産に認定されています。
ひゃくわ亭では、鮎は塩焼きで。天然鮎・養殖鮎ともに、ご予約にてご用意しています。
うなぎだけではなく、岐阜の川の恵みを扱うこと。それも、昭和22年創業の川魚問屋・岐阜今清から続く、ひゃくわ亭の原点です。